「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令の一部を改正する政令(案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)について

本協会が提出したコメント

環境省が意見を募集している「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令の一部を改正する政令案」に関して、日本アジアカワウソ保全協会は、10月25日に次のコメントを提出しました。


 ワシントン条約においてビロードカワウソとコツメカワウソを附属書IIから附属書Iに変更することが提案された背景には、両種が国際自然保護連合のレッドリストではともに絶滅危惧種(Vulnerable)とされているにも関わらず、十分な保全策が原産地国で行われていないことがある。直接的な理由としては、東南アジアでは毛皮の密輸のための密猟が広がっていること、ペットのためのインターネット販売が横行していること、さらに、日本へのコツメカワウソの生体の密輸摘発が近年急増していることがあげられる。これらを防ぐためには、両種を附属書IIから附属書Iに変更することは妥当なことであり、これに伴い、国内法に則って、国際希少野生動植物種として施行令別表第2の表2に追加することは妥当である。

 日本としては、両種の毛皮の需要は低いと思われるため大きな問題とはいえず、主に、ペットなどへの需要があるコツメカワウソの生体の密輸への対応が求められているといえる。密輸の裏には、子カワウソを捕獲するために親カワウソを殺していることや、摘発された密輸カワウソは、密輸途中で死亡したり販売されているカワウソのごく一部であるという危機感が国際的に共有されており、「密輸を防ぐためにどのような施策が必要か」を政府として検討する必要があると考える。

 本協会としては、下記の対応が今後必要と考える。

  • 意見1. 密輸個体を排除できる登録制の実施
    国際希少野生動植物種として販売するためには登録する必要が生じるが、密輸の摘発状況から考えて、少なくない数の密輸個体がすでに国内にいると推測される。密輸個体の登録を認めるメリットは何も無いと考えられ、密輸した個体を登録して販売できるということがないようにするのが、種の保存法の趣旨から見て必要なことである。

  • 意見2. 登録制におけるDNA用いた手法の利用
    生体個体のDNAを調べることは近年安価でかつ実用的な技術になって来ている。個体識別や親子判定をDNAによって行うことは、より正確で、現実的な手法となっており、登録においてもこの技術を利用するべきだと考える。本協会もこの技術を有しており、必要であれば技術協力をすることが可能である。

  • 意見3. 動物愛護管理法との連携
    地方自治体は動物カフェ等の施設への立入検査を行い、購入先の第一種動物取扱業者名が記載された台帳を確認している。これらの記録を全国的に集計すれば、登録が義務ではない展示されている国内のコツメカワウソの状況の把握ができ、密輸個体の排除につながると考えられる。また、現在進められている改正動愛法の施行に向けた政省令整備になかで入手先の掲示義務等を入れることも同様の効果があると考える。


環境省からのコメント

環境省は当協会のコメントを受けて次のような返答を行いました。

意見1 に関する返答

登録申請には当該個体の取得の経緯等を明らかにする必要があり、密輸した個体を合法的に取得したかのように偽り、登録した場合は、個人は5年以下の懲役若しくは 500万円以下の罰金、又はこれを併科し処され、法人は一億円以下の罰金に処されます。 頂いた御意見は、今後の施策の参考とし、個体の登録については厳格な運用に努めます。

意見3 に関する返答

動物愛護管理法においては、都道府県及び政令指定都市における自治事務として、販売業や展示業等の動物取扱業における動物の健康・安全の確保等を図っていますが、立入検査の頻度や方法等は、地域の実情を踏まえて各自治体で判断することが適切と認識しており、引き続き、種の保存法に基づき、国際希少野生動植物種の譲渡し等を原則禁止することによりワシントン条約に基づく国際取引の規制の確実な実施を図ってまいります。

関連する返答(意見2、および TRAFFIC のコメントに関する返答)

個体の登録については厳格な運用に努めます。法の目的に照らし、適切な制度の運用をはかるため、頂いたご意見は今後の施策の参考とさせていただきます。

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日本アジアカワウソ保全協会
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アジアに生息するカワウソの保全のための組織です。